南柯句会(なんか)

〒630-8113 奈良市芝辻町2-5-20
Phone:090-7109-6235
Mail:nrf58364@kcn.jp

    主幹 和田 桃 

 
南柯(なんか)は、大正二年設立に始まり、令和までの四つの時代を生きています。その間いろいろなことがありましたが、戦争の時も、その時代の主幹が心を尽くして守ってきました。私は五代目で、初めての女性主幹になっております。

「有季定型」と「心に感じたものを詠む」ということを基本にし、時代にあった新しい感覚も柔軟に取り入れていきます。私自身は、指導する立場をとらず、俳句仲間と一緒に句について話をし、皆と同じように研鑽を積んでいます。

初めての方には丁寧な添削をし、質問なども承ります。誰でも参加しやすく、親しみやすい句会を心掛けておりますので、気軽にお声をかけてください。




        

 桃弧十矢

令和6年2月1日発行 



      
 
寒鯉の五感を閉ぢて岩の隅
 
 
入浴を喜ばしたる柚子の揺れ

 
とりどりの飾り掻き分け切る聖菓
 
 
元伊勢は枯葉累々たる社
 
 
大原の地蔵は苔の冬衣
 
 
白障子ひと枠猫の通り道
 
 
夜通しの灯を守る除夜の社かな
 
 
居間に聞くふたつ大寺の除夜の鐘
 
 
【奈良の風景】 おん祭 大宿所の懸物
 
縊死のごと吊られ寒夜の鮭の贄
 
今日だけの神の夜遊びおん祭
 
 
 

 桃李満門

令和6年2月1日発行 



      
 
煤逃や男湯どつと混みにける
山﨑直

 
羽ばたきの一度でふわり冬の鷺
           
白井美也子

 
列島は山が七割山眠る
 
上田秋霜

 
集落に掛大根の灯りかな
 
富野香衣

 
山装ふ火床を大に染め残し
 
岡本へちま

 
春浅し祖父と無言の朝ご飯
 
午居平華

 
子ら巣立ちモノクロームのクリスマス
 
山下絹

 
水鳥の水掻く下を鯉しづか
 
宮成乃ノ葉                            

 

明けましておめでとうございます。今年はホームページで年賀を送っています。年末にご挨拶ができていない方には、年賀状をお送りしていますが、来年からは南柯ホームページでのご挨拶になります。よろしくお願いいたします。

今年は角川の「結社歳時記」南柯が掲載されます。ささやかな事ですが、代表として「南柯」に貢献できたような気持ちでいます。

会員の皆様のおかげです。ありがとうございます。

今年二名公民館の教室がひとつ増え忙しくなりそうですが、俳句の世界ではまだ若手ですので、頑張ってやりたいと思っています。

皆さま、これからも南柯を支えて下さいますようにどうかよろしくお願いいたします。

        

 桃弧十矢

令和5年12月1日発行 



      
 
句帳とも雑記帳とも草の花
 
 
入水の采女に月の夜の雅楽
 
 
秋蝶や仏は笑みて思惟せり
 
 
秋天へとけば風なす競走馬
 
 
八色の騎手の帽子の爽気かな
 
 
文字びつしり競馬新聞文化の日
 
 
綴れさせこおろぎ闇を深くせり
 
 
 
 
 
【奈良の風景】 郡山城址
 
店構え鄙に菊屋の十二月
 
不本意ながら地蔵さかさに暮の秋
 
堰閉じてお堀は秋草の盛り
 
 

 桃李満門

令和5年12月1日発行 



      
 
 
会えばみなことば親しき紫蘇の花
               西山文子

 
町会費集金当番虫集く
               絹山たかし

 
船頭の歌谺して水の秋
               加藤悦男

 
頭からセーターを脱ぐけふを脱ぐ
               佐藤双楽

 
不知火といふ名の果実秋日和
               宮成乃ノ葉

 
姿見に姿勢正して今朝の秋
               内田康子

 
戸締りは月がきれいと言ひし後
               浅間二晁

 
りす組に並ぶ自慢の木の実独楽
               山埼たか
 
 
                            

 桃弧十矢

令和5年10月1日発行 



      
 
落ち蟬の軽くなるまでもがきけり 
 
 
蓮の葉の上に蓮の葉蓮の花
 
 
どこからも遠く蓮の紅立ちぬ
 
 
蓮池の舟沈むまま朽ちるまま
 
 
堂ひとつ佛一体蓮の花
 
 
沼昏く蛇の蛻の光けり
 
 
通り抜け禁止区域の蛇の衣
 
 
白鷺の樹冠につるむ声険し
 
 
【奈良の風景】 平城宮跡
 
叢へはたと帰燕の塒入り
 
 

 桃李満門

令和5年10月1日発行 



      
 
 
こども園二坪の田の余り苗 
               宮本こぼ

 
食卓に一杯の水敗戦忌
               安藤町彦

 
今朝からは蟬の声にて目覚めけり
               浅間二晁

 
トンネルを越えれば別の秋ありて
               水上呑

 
霊場を去るに涼しき杉木立
               大岡伸

 
渇ききる墓を洗ひて我生きる
               山田太陽

 
魁も殿もゐて蟻の列
               山下絹

 
妄想に費やす時間蟬時雨
               山本わこ
 
 
              

 桃弧十矢

令和5年8月1日発行 

  
      
 
 
雀来て総身に清水振りかぶり 
 
厄を吸ひ日を吸ひ茅の輪小麦色
 
一寸の岩の歪みに蛇の息
 
燕来る島に一戸の喫茶店
 
島に来て茅の輪の霊力を跨ぐ
 
かはらけの墓場涼しき島の果て
 
寝静まる湖に一筋キャンプの灯
 
社殿立つ島の切岸青葉風
 
我も鷺も淡海の縁に佇つ晩夏
 
 【奈良の風景】 平城京あと
 
夕暮の湿りを鳴きぬ行々子
 
 

 桃李満門

令和5年8月1日発行

  
      
 
 
青足りて尚青過ぎず山若葉 
               岡本へちま

 
気後れも旅のひと日やサンドレス
               山下 絹 
 
高野山奥に入るゆくほど涼し
               上窪泰干

 
木洩れ日の斑仔鹿の斑へと
               宮成乃ノ葉

 
蟇旧家の跡に建つ五軒
               松井松子

 
夫にはなかつた余生青楓
               内田康子

 
坂越せば天まで藍の夏の海
               山中薫

 
玉葱や泣きたい夜のみじん切り
               山本わこ
 

              

 桃弧十矢

令和5年6月1日発行 

  
      
 
 
シーソーにひとりとふたり花菜風
 
手入れして下萌を待つ植物園
 
一咫を水面に余す若柳
 
多羅葉の葉脈強し青時雨
 
下りてくる新芽危ふきディアライン
 
姉川の雉の鋭声やとの曇
 
花吹雪それはそれはと見とれけり
 
鍋やかん村の男の花の宴
 
 
 【奈良の風景】 大神神社 檜原神社
 
神おぼろなれど祈りに聖五月
 
元伊勢の名前尊び青嵐
 

 桃李満門

令和5年6月1日発行 



      
 
 
遠足の子ら問ふたびに新たなり
    山下 疾風
  
 
腋染の汗の恥ぢらひうひうひし
    佐藤双楽
 
禅寺の東司卯の花腐たしかな
    上田秋霜
 
此方へと雉やがて彼方へと雉
     岡本へちま
 
六地蔵春を装ふよだれかけ
     宮本こぼ
 
靴紐を直す間の菫草
     山本わこ
 
集落に花の花寄すお濠あり
     宮成乃ノ葉
 
花疲れ吊革持ちて眠りけり
     松岡出
 

 桃弧十矢

令和5年4月1日発行 

  
      
 
 
春めくや雁木に跳ねる船の余波
 
植木屋の落とす椿をもらひけり
 
暖かや会合に出る茶と和菓子
 
公園の春や数多の注意書き
 
耕人の長靴天水に洗ふ
 
パレットの絵具だまりを溶く弥生
 
料峭や入れば灯の点く宝物館
 
早春や奈良に名代の皿うどん
 
 
 
 …奈良の風景  修二会
障子戸に聞く水取の昼の僧
 
水取の僧の退出拝みけり
 

桃李満門

令和5年4月1日発行 

  
      
 
 
利休邸井戸一つある余寒かな
    浅間二晁
  
 
初音ミク歌ふバーチャル事始
    富野香衣
 
曳き猿の晴天めがけ宙返り
  佐藤双楽
 
おねしょの子あっけらかんと四温晴
  椿本晨起朗
 
鷽替へてさつさと下りる男坂
  絹山たかし
 
ゆつくりと滅ぶ人類万愚節
  中野花山
 
待春の頬杖ついて虫図鑑
  岡本へちま
 
草餅の売場に行けば妻がをり
  上窪泰干